Have you
met microbes
today.

 微生物機能開発学研究室/宮崎大学

研究に対する考え
 生物工学者の研究の進め方は、自然界あるいは人為的生産の場から有益な機能をもった生物を見つけだし、その機能を詳しく調べ、模倣し、改変し、そして利用法を考えるというように展開してゆきます。これは「どうしたらこれができるのだろう」という典型的な思考から始まっています。
 別な研究の進め方としては、私が提唱している超現実的生物学という営みにあります。生物学は自然をよく観察し、生物やその周りの自然環境のしくみや原理を明らかにしていく営みですが、超現実的生物学は自然を見てはいけないのです。物質の精製法や合成法が発達し、自然界に存在しない物質やその状態を私たちは作ることができます。またさまざまな物質の運動を生み出し、制御できる物理装置の技術が発達してきたおかげで、私たちは自然界にあり得ない環境を作り出すことができるようになりました。このような環境に生物を暴露させた時、どのような原理原則が働くのだろうかという疑問から始まるのが超現実的生物学です。超現実的生物学は「何がいったいどうなっているのだろう」という一つの典型的な思考法です。
 私たちの研究はこのどちらかの思考法にて始められます。後者の思考法で大切なのは研究によって得られた新原理は応用をみすえなければならないということです。新原理は応用されることにより美しいものとなるからです。それから新原理は人類の幸福のため応用されなければなりません。断じて人を殺める兵器などに応用してはならないのです。そして超現実的生物学から再び真実の自然をよく観察することに戻り、自然本来のしくみを明らかにしてゆきます。これらの探求を繰り返すことによって、生命とは何か、進化とは何か、自分とは何者かといった根源的な問いに、自分なりの答えを見出せるのではないかと思うのです。
 
Policy of our research
We biotechnologist shall isolate creatures that must possess applicable benefit for humankind well-being and development of industrial techniques from natural habitat or artificial environment, and analyze, mimic, alter these benefit function to improve conventional technology, and create innovative technology. This research initiation is based on the typical thought process; engineer's initiation "How do we do to achieve this?"
As the other research initiation, working of surrealistic biology which I have advocated is so in. In biology, researchers well observe the creature and the natural habitat, phenomena and mention the mechanisms of the creature and natural environment, and try to find principals of Nature. However, in surrealistic biology, researchers do not observe the natural habitat. Is this thought process science?
Development of purification and synthetic technique of substances enable us to synthesize unnatural materials and make unnatural state. Beside, development of physical equipments, which manipulate and regulate the motion of various kind of substances, enable us to make the environment which never be observed in nature. When creature was exposed to environment which never be observed in the nature, surrealistic biology is initiated the question, what principal work in it. Surrealistic biology is one of typical thought process starting from "What and how on earth happened to it?"
Our research is begun with either thought processes. Important thing of latter thought process is that we make effort to apply a novel principal obtained by research to general techniques. Because a novel principle must change to be brilliant by being applied. Beside, novel principle must be applied for human's well-being, never be applied to weapons with that kill people. Then, we go back to conventional science by which nature is observed well from surrealistic biology, and find mechanisms of real nature. I believe that I am able to find own answer against origin of the question "What is life?" "What is evolution?" "What am I" by repeating both thought processes.

 

Have you  met life  today.

特異状態微生物学とは何か  What is Surrealistic Microbiology?
 
「微生物」は肉眼では判別できないだけの単純に小さい生物の総称です。自然界にはダニ類、センチュウ類、原生動物、酵母、カビ、細菌とあらゆる種類の微生物が生息しています。土壌はもちろんのこと、地球深部、海洋、砂漠、高山地帯、成層圏にも見出され、微生物の見つからない場所はないと言っても過言ではありません。
 微生物は今や自然に発生すると考える人はいないでしょう。しかし18世紀までは生物は自然に発生するものだと人々は信じていました。まず目に見えない生物の存在を知る以前の、生物の自然発生を信じていた時代を想像してください。人類はどのようにして、目に見えない生物の存在を知ったのでしょうか。どのようにして生物は自然に発生することはないという考えに至ったのでしょうか。さらにどのようにして目に見えない生物を詳しく知られるようになったのでしょうか。近代微生物学史に触れることにより、生物は自然発生すると信じていた頃からの人間の住む(精神)世界の広がりを理解していただきたいと思います(下図)。
 科学は自然を十分観察し、物質間の物理現象や生命現象など自然そのものの原理法則を明らかにしていくことです。自然界には高温高圧環境、アルカリ性、酸性、高塩濃度環境などが存在していますが、このような環境中では生命活動などあり得ないという固定観念あり、生物学の研究対象からは遠ざけられていました。1967年にThomas Brockはイエローストーン(米国ワイオミング州)の沸騰温泉中に生物がいるという驚くべき発見をしました。この発見をきっかけに生命にとって過酷な極限的環境からも微生物がぞくぞくと見つかり、生物の生きる世界の理解が深まりました。このような極限的環境を好んで生きる微生物の研究を極限環境微生物学といいます。
 私たちは極限環境微生物学の課題立案手順とその研究手法によく似ているのですが、少し距離をおいてしかも遠望すらできることを感じるようになり、そこに新たな研究領域があるのではないかと意識するようになってきました。物質の精製法や合成法が進歩し、自然界に存在しない元素や化合物あるいはそれらが存在する状態を研究者たちは作ることができます。またさまざまな物質の運動を生み出し、かつ制御することのできる物理装置の技術が発展してきたおかげで、自然界にありえないような、見受けられにくい疑似地球外環境を作り出すことができるようになりました。自然にありえないような想定をはるかに超える環境や刺激に微生物を暴露させたとき、どのような相互作用や原理原則があるのかといったことを明らかにする研究を特異状態微生物学といいます。本研究室では、特異状態微生物学の考えから見出されたヨシダ効果とよばれる細菌と微細針状物質との物理現象について研究しています。ヨシダ効果は微生物への遺伝子導入やアスベスト検知(宮大法)に応用されています。
 特異状態微生物学は、地球上にあり得ない環境を考えますので、地球外生物の存在可能性を示す研究にもかかわってきます。生物界の理解を深め、人間活動のフロンティアを広げることになるでしょう。